エッセイ · 嗅覚アート

「Hammer Projects: Roger Hiorns」展

Hammer Projects: Roger Hiorns.

作家は過程を始め、そして身を引く。

ハマー美術館のロジャー・ハイオンズ:青い硫酸銅の結晶に覆われた彫刻と、火と泡を使った作品

Hammer Museum · Hammer Museum



ロサンゼルスの若い芸術家

2003年9月11日から2004年1月18日まで、ロサンゼルスのハマー美術館(Hammer Museum)は、シリーズ「Hammer Projects」の一室をロジャー・ハイオンズ(Roger Hiorns)に与えた。キュレーターはジェームズ・エレイン(James Elaine)。部屋はまるごと、当時二十八歳のイギリスの芸術家に委ねられた。

ハイオンズは1975年、イングランドのバーミンガムに生まれた。バーミンガムのボーンヴィル・カレッジ(Bournville College)で学び、1996年にロンドンのゴールドスミス・カレッジ(Goldsmiths College)で学士号を得た。ハマーでの展示の当時、彼はロンドンで暮らし、制作していた。

部屋の素材は奇妙だった。車のエンジン、乾いたアザミ、陶器の鉢、鋼の格子、火、石鹸の泡、香水、そして大量の青い結晶。

じっとしていない素材

ハマーはハイオンズを、非物質的で一時的な媒体を扱う作家と説明した。火、石鹸、香水とその香り。伝統的な彫刻はこれらを避ける。石やブロンズが選ばれるのは、残るからだ。火も泡も匂いも、現れたとたんに消える。

「Two Forms Yellow and Brown」(1999年)は、洗剤から泡を押し出しつづける陶器の鉢でできている。泡は盛り上がり、縁からあふれ、崩れ、また盛り上がる。作品は二度と同じ形にならない。

「Vauxhall」(2003年)という作品は、歩道に埋め込まれるような鋼の格子で、そこから炎が立ちのぼる。同じ年、テート・ブリテンで、ハイオンズは彫刻展示室の床に排水口を切った。格子から水が流れ落ちるかわりに、火が上がってきた。

そして香水を染みこませた鋼板があった。鋼は冷たく、硬く、工業的。香水は温かく、柔らかく、揮発する。二つを合わせることで、ハイオンズは、目には金属としか読めないものを訪れる人に嗅がせた。

青い結晶と錬金術

展示でいちばん目を引いたのは青だった。「The Architect's Mother」(2003年)は、硫酸銅の結晶に覆われた BMW 8シリーズのエンジン。同じく2003年の「Intelligence and Sacrifice」は、結晶したアザミを穴あきの鋼板に据える。

方法は単純だ。ハイオンズは物を飽和した硫酸銅の溶液に浸し、その表面に結晶を育てる。どこに育つか、どれほど大きく、どれほど鋭くなるかは、彼が決めない。化学が決める。

ハマーはこれらの作品を錬金術の考えと並べた。ありふれた物を、奇妙で貴重な別の何かに変えること。車のエンジンは鉱物の塊になる。野のアザミは宝飾品になる。

5年後の2008年、ハイオンズはこの考えを「Seizure」で極限まで押し進めた。ロンドンの放棄された集合住宅の一室まるごとに、硫酸銅の溶液を流し込んだのだ。

作家の手を取り去る

ハイオンズのやり方の中心には、作家の手を意図して取り去ることがある。化学的な、生物的な、あるいは火による過程を動かし、結果はそれに決めさせる。作品は彼がつくるものではない。起こるものだ。

匂いは、どんな素材よりもこの方法に向いている。源を離れた匂いを制御できる人はいない。匂いは空気に、温度に、通り過ぎる人に従う。香水を染みこませた鋼板は、何週間も匂いを変えずに保つことはできない。匂いは弱まり、誰もあらかじめ決めていない仕方で移ろう。

「Hammer Projects: Roger Hiorns」が残るのは、彫刻を形ではなく条件として扱う作家を早くに見せたからだ。火、泡、結晶、香水。それぞれが自分の役を果たす。訪れる人は外に立ち、形をとっていくものを眺め、そして嗅ぐ。