エッセイ · 嗅覚アート
タマラ・ヘンダーソン。「Continuity the bronze wizard approves」。
Tamara Henderson. Continuity the bronze wizard approves.
匂いのない青銅。匂いをもう一度灯せるよう、マッチが添えられている。
提供:the Artist & PALAS, Sydney · ArtReview
高さ28センチの魔法使い
「Continuity the bronze wizard approves」は2023年の小さな作品。中心には、着色を施した鋳造青銅の魔法使い、高さ28 cm。一緒にあるのは、長さ33 cm のユーカリ材の箱、野焼きの陶のビーズ、ユーカリで染めた布切れ、真鍮の金具、香、そしてマッチ。
素材のリストはゆっくり読む価値がある。ほとんどが一本の木から来ている。箱にユーカリの木。染めにユーカリ。匂いに香。金属は青銅と真鍮だけで、マッチは始めるためにある。
作品は、2024年4月20日から6月22日まで、シドニーの PALAS で開かれたタマラ・ヘンダーソンの展覧会「Eye in the High」で展示された。
同じ展覧会には、もうひとりの魔法使いがいた。同じく2023年の「A Natural Wizard, Eucalyptus in thought」。シルクハットとローブをまとい、燃えるユーカリの香を入れた器を持つ、手のひら大の野焼きの陶の像。このふたつの小さな像が、展覧会の匂いの始まる場所だ。
ユーカリとブッシュ
ユーカリはオーストラリアの木だ。匂いは温かく鋭く、すぐにそれとわかる。そこに暮らす人にとって、それはブッシュに、山道に、暑い午後に属している。
サラ・ヘザリントン(Sarah Hetherington)は ArtReview の評で、ユーカリの香が見る人をオーストラリアのブッシュへ運ぶと書く。白いギャラリーは、温度と土と葉のある場所になった。
匂いは物とはまるで違う尺度で働く。青銅はわずか28 cm。きちんと見るには身をかがめなければならない。匂いは誰にもかがむことを求めない。部屋じゅうに広がり、遠い隅に立つ人にも、まだ像を見ていない人にも届く。
ヘザリントンはまた、展覧会のイメージがギャラリーを出たあとも残ると記す。ユーカリの匂いのように。匂いは外までついてくるものだ。髪に、服に、記憶にまとわりつく。
微生物、腐敗、再生
「Eye in the High」は微生物学についての展覧会だった。自然界の分解と再生について、そして人間の活動が生態系に与える影響について。ヘンダーソンは絵画、彫刻、映像を用いた。
2024年の絵画三点は、鋼のメッシュと紙粘土の額に収められ、「A Dream, A compost, A fertile stir」のような題をもっていた。青、エンドウ豆の緑、琥珀、オレンジの吹きガラスのシャンデリアは、骨格のようなかたちと五つの疑問符をもち、「Director's Anchor maintains the plot」と名づけられた。そして16mmフィルム「Green in the Grooves」が約27分間流れた。
そのなかで、ユーカリの香は特別な役割を担う。目の前で起きている分解だ。燃える一本は変化していく物質だ。棒から煙へ、煙から匂いへ、匂いから無へ。残るのは灰で、それは土が引き取る。
青銅は静かに立ち、認める。タイトルはこの関係を継続と呼ぶ。長く続くものは束の間のものに抗わない。そのかたわらに立ち、見守り、燃えることがまた始められるよう、マッチを手元に置いている。
心に残るのはそこかもしれない。彫刻はふつう長く残るために作られる。この彫刻は、その匂いが消え、また灯され、また消えるように作られている。